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水野会長「12月度定例記者会見」あいさつ要旨(12/4)

水野明久 中部経済連合会会長の定例記者会見を開催し、物流委員会がとりまとめた提言書を公表するとともに、今年一年の振り返りと来年の抱負について、述べました。

持続可能な物流の構築に向けた提言書
本提言書は、物流委員会が作成し、本日の総合政策会議において承認を受けましたので、公表するものです。
中部圏、ひいては我が国の経済を下支えする「ものづくり」産業が持続的に発展するためには、「経済の血液」とされる物流を止めないこと、すなわち、原料調達から製品納入、販売に至るまでの安定した物流の構築が極めて重要になると考えております。
現在、我が国全体が生産年齢人口の減少に直面するなか、とりわけ、物流業界では、ドライバー不足をはじめ、来年4月から適用される時間外労働規制等による輸送能力不足、いわゆる「物流2024年問題」への対応や、カーボンニュートラルの実現に向けた対策は、先送りできない社会課題として、待ったなしで前進させる必要があります。
中経連としては、本書を通じ、物流業界における「生産性向上」に向けた取り組みを中心に提言することで、「労働力不足の解消」や「CO2排出量の削減」につなげ、物流危機を乗り越えるとともに、安定輸送の実現とものづくり産業の持続的な発展に貢献してまいります。

◇今年一年の振り返り
2023年は、半導体不足の影響緩和に伴う自動車の挽回生産や、5月に新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが5類に移行されたことも後押しとなり、個人消費が持ち直したことなどから、中部圏の景況は大幅に改善し、社会経済活動の正常化や、コロナ禍からの復活に向けた再スタートの年となりました。
一方、中東情勢の緊迫化に伴う地政学的リスクの拡大や歴史的な円安などを背景とした、原材料やエネルギーなどの価格上昇が、昨年に引き続き、国民の暮らしや企業経営に大きな影響を及ぼした一年でもありました。
また、需要の増加や労働力人口の減少などにより深刻化する「人手不足」への対応は、非製造業と建設業で最大の経営課題として顕在化しております。

今年の春闘では、およそ30年ぶりの高水準となる3%台後半の賃上げ率となりましたが、直面する物価高と人手不足を乗り越え、我が国経済の力強い未来を切り拓くためには、物価上昇に負けない持続的な賃上げによる人への投資が期待されます。
中経連としては、税制面からの支援として、今年度末で期限を迎える「賃上げ促進税制」の延長と適用要件の緩和を政府に求めております。また、人手不足の解消に向けては、先ほどお話しいたしました物流に関する提言のほか、ポータルサイトの運営や人材育成による企業のデジタル化支援、留学生の就職サポートなどの取り組みを通じ、企業の生産性向上や人材確保に向けた活動を後押ししています。

当地の先行きにつきましては、中経連が今月1日に公表した景況に関するアンケート調査によれば、米中経済の先行きや海外の政情不安、資源・原材料価格の変動などを懸念材料に、会員企業の見方は慎重であり、来年6月頃に向けての景況感は足踏みが見込まれております。
中部圏は、今のところ欧米向けの堅調な輸出にも支えられておりますが、政府・日銀が目指す物価と賃金の好循環が実現できるか、依然としてくすぶる世界的なインフレ懸念や不安定な金融・為替市場などの影響が実体経済に及ばないか、引き続き注視していきます。

◇来年の抱負
中経連は、2021年6月に、2025年までの5年間の中期活動指針として、「付加価値の創造」「人財の創造」「魅力溢れる圏域の創造」を3本柱にした『ACTION2025』を策定し、来年は4年目を迎えます。
2024年は、これまで積み重ねてきた3年間の歩みを礎に、アクセルをさらに力強く踏み込み、活動の具体化と実行に向けた次の一歩を加速させるとともに、将来を見据えた「中部圏ビジョン」を示すことで、「地域力向上に向けて躍進する一年」にしたいと考えております。

<付加価値の創造>
まず、「付加価値の創造」に向けては、100年に一度の大変革期を迎える自動車産業における次世代モビリティ社会の構築や、中小企業を含むカーボンニュートラルの実現に向けた産官学連携のほか、当地の経済を活性化させるエンジンとなる、イノベーションの創造に向けた取り組みを推進しております。
2019年に名古屋市と開設し、今年で5年目を迎えたナゴヤイノベーターズガレージでは、幅広い層を対象としたプログラムの開催を通じ、企業の新規事業やスタートアップ創出の素地となるマインドやコミュニティ形成の支援に注力しており、2023年6月には、累計の来場者数が10万人の大台を突破いたしました。
中経連は、10月に包括連携協定を締結したステーションAiやなごのキャンパスをはじめ、中部圏各地域の拠点との連携も深めることで、中部圏にイノベーションのうねりが起きる機運を醸成してまいります。

イノベーションの活性化やスタートアップ創出に向けては、人を呼び込む、人が集う、魅力ある「まちづくり」を同時に進めることが重要と考えております。ガレージを起点とした名古屋の栄周辺エリアが、志と熱量を持ったイノベーターをはじめ、意欲的にチャレンジする人々で賑わい、アイデアの化学反応や価値創造と実装の連鎖を生み出すまちへと進化できるよう、産学官が一体となってチャレンジしていきたいと思います。

<人財の創造>
次に、「人財の創造」では、我が国で人手不足が深刻化するなか、中小企業などにおけるデジタルスキル向上に向けた支援のほか、リカレント・リスキリング教育や博士人材の活躍、技術者など専門的な業務に就く「高度外国人材」の確保に向けた産学官連携の取り組みなどを進めております。
また、当地で働く外国人労働者の子供達を対象とした日本語・キャリア教育支援など、外国にルーツを持つ人材の活躍や日本社会への定着に向けた活動を展開しています。現在、当地の企業で働く100名程度のボランティアの方が地域の日本語学習教室で教師役として参加しており、来年はさらに多くの企業や行政、大学などへと支援の輪を拡げ、外国人との共生社会づくりに向けたモメンタムを高めていきます。
中経連は、多様で才能豊かな人材が活躍し、住みやすい環境を整備することで、国内外から選ばれる、魅力ある地域に進化することを目指してまいります。

<魅力溢れる圏域の創造>
最後に、「魅力溢れる圏域の創造」にあたっては、観光・防災・デジタル化など広域で共通する課題の解決に向け産学官連携を深めるほか、交通インフラの整備による利便性向上や、南海トラフ地震などの大規模災害を見据えた社会基盤の強靭化を図ることで、人流と物流を活発化していきます。
特に、リニア中央新幹線開業後の「日本中央回廊」形成による効果の最大化に向けては、リニア中間駅と南北を結ぶ交通インフラを強化することが重要と考えており、本年も、主要道路の早期整備に向けた国への要望活動を重ねるとともに、今後予定する「中部圏広域地方計画」の策定に向けた議論を深めてまいりました。
引き続き、これらの解像度を上げる活動に注力するとともに、目前に迫る「物流2024年問題」の解決に向け、物流業界の生産性向上に資する取り組みの支援に軸足を置き、安定的な物流の維持・強化を図っていきます。

そして、来年は、ACTION2025に基づく活動を着実に前進させるだけでなく、その先、2050年頃の社会像を見据えた上で、当地の強みを活かし、中部圏の経済を一段高い成長軌道に乗せていくための新たなビジョンを策定し、歩むべき道筋を示していきたいと考えております。

◇まとめ
中経連は引き続き、地域のステークホルダーや資源をつなぎ、そのポテンシャルを引き出し・伸ばすことで、当地の総力を結集し、社会課題の解決や中部圏の付加価値向上に貢献できるよう、全力で挑戦してまいります。

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