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「アカデミックナイト」キックオフ講演会(9/26)報告

ナゴヤ イノベーターズ ガレージでは、大学シーズを起点とした新事業創造や既存事業の革新を促すことを目的とした「アカデミックナイト」をスタートし、9月26日(木)に開催したキックオフ講演会には約100名が参加した。

まず、名古屋大学総長の松尾清一氏より「名古屋発イノベーションの起爆剤に-ナゴヤ イノベーターズ ガレージへの期待と大学の役割」と題して講演を頂いた。
続いて、名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)拠点長の伊丹健一郎氏より「スーパー分子をつくる:無限の可能性と異分野融合のチカラ」と題して講演が行われた。

「アカデミックナイト」は、毎月第2・第4木曜日に中部圏の大学から次代をつくる研究者が企業関係者を前に、最先端の研究を紹介するとともに、参加者と議論することで産学連携の強化を図っていく。 

 

講演1.「名古屋発イノベーションの起爆剤に-
     ナゴヤ イノベーターズ ガレージへの期待と大学の役割」

講師:名古屋大学 総長 松尾 清一 氏

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 【講演要旨】

<名古屋地区での新規起業:世界のトレンド>
名古屋地区は、モビリティを中心に日本でも屈指のものづくり、輸出産業基盤がある。人口減少と周辺国のキャッチアップやIoTの進展により、今のままでは地域GDPを喪失する可能性が高いと危機感を抱いている。
名古屋大学は、リーディングユニバーシティとして地域のスタートアップを牽引したい。世界では、スタートアップエコシステムが形成された都市を中心に、さまざまなスタートアップ企業が誕生している。ニューヨーク市では、リーマンショック後、市が中心となり、大幅な投資や大学との連携を深めたことで、今や倉庫街がスタートアップ企業で埋め尽くされている。 

<名古屋地区におけるエコシステムの形成
スタートアップエコシステムを形成するためには、自治体・大学・産業界が産学官連携を形成し、一つの目標に向かって戦略的に取り組まなければならない。その中で大学の果たす役割は非常に大きく、名古屋大学では、周辺大学と連携しアントレプレナー教育、スタートアップ準備資金、五大学広域ファンドなど、大学発ベンチャーの成長ステージにあわせた支援プログラムの提供を行っている。当地域は、優良な製造業が集積しており、技術開発型のスタートアップが生み出される素地がある。さまざまな業種やステークホルダーがイノベーション拠点に集まることでアイデアを集積し、たくさんの新しいものを生み出していく。それが、スタートアップエコシステムの形成につながり、イノベーションの起爆剤となる。

 
 

講演2「スーパー分子をつくる:無限の可能性と異分野融合のチカラ」

講師:名古屋大学 トランスフォーマティブ生命分子研究所(ITbM)
    拠点長 伊丹 健一郎 氏

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【講演要旨】

<分子で世界の諸問題を解決できる>
合成化学とは、分子の世界のレゴであり、複数の原子をつなげて全く新しいクリエイティブな分子をつくることができる。歴史を紐解くと、我々の生活や科学技術を一変させてきたのが分子であり、未来にわたってもそうあり続ける。すなわち、この地球上には、健康医療、エネルギー、食糧、水など、さまざまな問題があるが、必ず分子で答えを導き出すことが可能である。高校3年の時に「ベンゼン」に出会い、その虜となり、これまで30年間ベンゼンを使って圧倒的に美しいスーパー分子の生成に取り組んでいる。

<何気ない会話から画期的な研究がはじまる>
名古屋大学トランスフォーマティブ生命分子研究所(以下、ITbM)は、「分子で世界を変える」をテーマに4分野が融合した研究所である。ITbMでは、異分野の研究者・学生が、「Mix Lab」という同じ空間で研究を行っている。カジュアル・ディスカッションをコンセプトに、分野の壁を徹底的に取り払うことで、融合を加速させ、次世代の若手研究者を育てている。こうすることで、新しいアイデアが次々に生まれ複数の成功事例が誕生している。
トウモロコシなど人間の主食となる穀物に寄生して育つ「ストライガ」は、アフリカにおける深刻な食糧問題の原因の一端となっている。日本では、あまり知られていないこの問題に対して、ITbM内の何気ない会話から議論が盛りあがり、「基礎科学の面からアフリカの食糧危機の解決に貢献したい」という思いで研究がはじまった。その後、ITbMの異分野チームが、ストライガ撲滅の可能性をもつ分子を発見し、今年6月にこの分子をケニアに届けテストがスタートした。何気ない会話からはじまった研究が、今や世界で最も注目される研究の一つとなった。 

<新しい炭素のカタチをつくり出す仕組み>
「美しいものには必ず機能が宿る」。これまで、たくさんの新しくて美しい炭素のカタチを生み出してきた。その中でも、「カーボンナノベルト」の生成や、「グラフェンナノリボン」の完全精密合成は、伊丹研究室が総力をあげ取り組んだ汗と涙の結晶である。新しい画期的なアイデアは、異分野のメンバーが集った環境での、何気ない会話から生み出される。「異分野融合でワクワクを中心に取り組む」「若手のチカラ」をベースに、これからも新しくて圧倒的に美しいカタチを永続的に生み出すためには、さまざまな企業との共同研究やご支援をいただき、産業界との連携を強化していきたい。そのためにアカデミックナイトは非常に有効なプログラムで、大いに期待している。

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