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水野会長「5月度定例記者会見」あいさつ要旨(5/19)

本日はお忙しい中、定例記者会見にご出席いただき、誠にありがとうございます。

<はじめに>

まず冒頭に、米国の関税政策について、一言申し上げます。
トランプ政権下での貿易政策は、依然として不透明さを抱えており、世界経済にも緊張と不安が広がっております。とりわけ、自動車関連の対米輸出は日本全体の約3割を占め、その半数近くが中部圏から出荷されております。
仮に自動車への追加関税が長期化すれば、当地の経済に極めて大きな影響を及ぼしかねません。
さらに、ようやく兆しが見え始めた「物価上昇を上回る賃上げ」の流れにも水を差しかねず、懸念を強くしております。
日本政府には、日米双方にとって建設的な着地点を見据えつつ、関税の影響を受ける中小企業や裾野産業に対する支援を万全に講じていただきたいと考えております。
中経連としても引き続き、会員企業の声を丁寧に拾い上げ、国へ届けてまいります。

さて、本日、私からは、
・新たな理事候補者の選任
について、お話しいたします。

 <新たな理事候補者の選任

中経連は、本日開催いたしました理事会において、次の6名の方々を新たに理事候補者として選任いたしました。
・株式会社しずおかフィナンシャルグループ代表取締役社長の柴田 久 さん
・セイコーエプソン株式会社取締役会長の小川 恭範 さん
・中部電力株式会社代表取締役社長の林 欣吾 さん
・東海東京証券株式会社代表取締役社長の北川 尚子 さん
・株式会社百五銀行取締役頭取の杉浦 雅和 さん
・中部経済連合会専務の平松 岳人 さん
です。

各氏には、これまでのご経験と広い見識をもとに、中経連の活動に新たな視点と力を加えていただけるものと、大いに期待しております。
新体制は6月18日の定時総会を経て正式に発足し、その後、理事会において各役職が決定されます。

<退任1カ月前を迎えて>

さて、私の任期も、残すところ1カ月となりました。
本日は、会長として最後の定例会見でもありますので、この5年間を、少し振り返らせていただきたいと思います。
私が会長に就任した2020年6月は、新型コロナウイルスの感染拡大により、社会・経済活動が大きく制約された時期でありました。
外出は制限され、会議もリモートが中心となったほか、当地の飲食業や観光業、航空機産業などは大きな影響を受けました。
そのような中、私は、「中部圏の総力を結集し、前へ進もう」という思いで、副会長や会員企業の皆さまとともに、歩みを進めてまいりました。

<活動の軸となった2つの柱>

この5年間、私が特に大切にしてきたのは、「広域連携」と「産学官連携」、この2つの柱です。言い換えれば、“つなぐことの力”を信じて、取り組んでまいりました。
経済や社会の活動は、行政の境界には収まりません。課題を解決していくためには、地域の枠を超え、横の連携を深めることが不可欠です。中経連は、広域経済団体として、その「つなぎ役」を担ってまいりました。
もう1つの柱である産学官連携は、今後の価値創造に向けてカギを握るものです。企業、大学、行政が、それぞれの知見と役割を持ち寄り、一体となって新たな価値を生み出す「共創の時代」が始まっています。
かつてのように、企業が単独で成長を遂げる時代ではありません。
異なる強みを持つ主体が手を組み、共に進んでいくことこそが、持続的な発展につながる道だと考えています。こうした考えのもと、私が特に力を注いだ取り組みは、次の3つの分野です。

 (地域の声を国へ届ける「代弁者」として)
1つ目は、地域の声を国へ届ける「代弁者」としての活動です。
東京一極集中の是正国土強靱化税制エネルギー政策の見直し、さらには、リニア中央新幹線と連動した広域道路ネットワークの整備など、中部圏における現場の声を政策に反映すべく、粘り強く提言を続けてまいりました。
また、中部国際空港の滑走路増設についても、ようやく着工に至り、当地の国際競争力強化に向けた基盤が整いつつあります。
企業一社では届きにくい声も、中経連としてワンボイスで届けることで、行政に響かせる。この役割の重要性を、改めて実感しております。

 (産学官の「連携基盤づくり」)
2つ目は、産学官の「連携基盤づくり」です。
2021年には、産学官連携プラットフォーム「CAMIP(中部先進モビリティ実装プラットフォーム)」を設立し、次世代モビリティ産業の創出に向けた取り組みを始めています。
翌2022年には、当地に共通する課題に対応するため、「中部圏広域産学官連携協議会」を立ち上げました。
また、アカデミア側では当地の国立大学と高専が連携する「シー・フロンツ」というネットワークも始動し、中経連が産業界の代表として、連携した活動を進めています。
博士人材の活躍推進や外国にルーツを持つ子どもたちへの学習支援といった取り組みも広がっています。
いずれも、立場を超えて同じテーブルで向き合い、対話を重ねる、その積み重ねが連携の土台を築くのだと確信しています。

 (挑戦を育てる「起爆剤」として)
3つ目は、挑戦を育てる「起爆剤」としての取り組みです。
ナゴヤイノベーターズガレージでは、学生や起業家が集い、学び、挑戦できる環境を整備し、新しい発想と人材の交流が生まれる場を提供してまいりました。
昨年には、ステーションAiが始動し、大学や企業との連携も進む中で、中部圏にイノベーションのエコシステムが着実に広がりつつあります。
今後は、ステーションAiを中核に、各地域の拠点が連携し、産官学が一体となって、イノベーションのモメンタムをさらに高めていただきたいと願っております。

こうして振り返りますと、前半の2年は、コロナ禍により活動が制限されましたが、後半3年間はリアルな対話が戻り、ようやく、多くの動きが実を結び始めました。
行政、大学、企業、地域の皆さまとの丁寧な対話、副会長をはじめとする委員会での真摯な議論と提言、これらが中経連の強みであり、組織の力だと感じております。
また、会長として、広く社会に中経連の想いや目指す姿を発信していく“広告塔”の役割も、私なりに果たしてきたつもりです。

<おわりに>

さて、今、私たちは再び、不確実性の高い時代にあります。
しかし、中部圏はこれまでも、リーマン・ショックやコロナ禍といった危機を産学官が一丸となって乗り越えてまいりました。
中経連はこれからも、「声を束ね、力をつなぐ」広域団体として、そして、「挑戦と連携を引き出す」起爆剤として、未来を切り拓いてくれるものと信じております。
私自身も、任期の最後の一日まで、持続可能な発展と競争力向上に向けて情熱を注いでまいります。

最後に、報道機関の皆さまには、日々変化する社会と経済の中で、中部の声や中経連の取り組みを丁寧にお伝えいただいたことに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

以 上

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