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シンポジウム『ニューノーマルを生き抜く~予防衛生・地域活性化・あらたな行動』(9/4)

スタートアップ企業を持続的に創出・成長支援する内閣府の「グローバル拠点都市」に愛知県・名古屋市・浜松市が選定されたことを記念し、9月4日(金)、Aichi Nagoya Startup Ecosystem Consortium(中経連、名古屋大学、愛知県、名古屋市など)主催のシンポジウム『ニューノーマルを生き抜く~予防衛生・地域活性化・あらたな行動』をナゴヤ イノベーターズ ガレージにて開催した。
オンラインを含め約300名が参加し、これからの世界に必要なもの、考え方、環境づくりなどについて、さまざまな角度から議論した。概要は以下のとおり。

◆オープニングセレモニー

イベントの開催に先立ち、Aichi Nagoya Startup Ecosystem Consortiumコアメンバーを代表して、水野中経連会長、河村名古屋市長、大村愛知県知事、佐宗名古屋大学副総長が挨拶を行った。

【水野会長 挨拶】
スタートアップ創出のポテンシャルが高い中部圏において科学技術開発はもちろんのこと、企業の経営やまちづくり、物流システムなど、多様な分野でイノベーションの発火点をつくりたい。
グローバル拠点都市への選定は、付加価値の高い新産業やスタートアップを創出し続けるエコシステムの形成・醸成に向けて大きなチャンスである。産学官の連携を一層強固にし、活動をさらに活発化させていきたい。
中部経済界もコロナショックで深刻な打撃を受けているが、イノベーションによる新たな価値の創出、新規ビジネスを芽吹かせるという目標に向けて、メインプレーヤーとなるスタートアップ創出の起爆剤になることを大いに期待する。

◆パネルディスカッション『ニューノーマルを生き抜く』
【モデレーター】
♢ 島田 佳幸 氏  中日新聞社・論説主幹
【パネリスト】
♢ 平田  仁 氏  名古屋大学・予防早期医療創成センター教授
♢ 佐宗 章弘 氏  名古屋大学・副総長
♢ 杉浦 克典 氏  株式会社スギ薬局・代表取締役社長
♢ 加藤 百合子 氏 株式会社エムスクエアラボ・代表取締役
♢ 岩木 勇一郎 氏 株式会社スピード・代表取締役

(以下、要旨抜粋)


島田氏:新型コロナウイルスの現状について

平田氏:日本における新型コロナウイルスの重症化率は低い状況にあるが、各国の状況を分析するとすぐには終わらず、日本も相当なパワーをかけて取り組んで行く必要がある。医療現場も厳しい。名古屋大学において第2波の患者数は第1波の2倍、第3波も予測不能で、少しでもキャパシティーを超えると病院の機能は停止する。

島田氏:4~6月期GDP年率換算、28.1%落ち込みという報道があったが実情は?

杉浦氏:人の移動を前提に置いた観光・外食業界、百貨店やアパレル業界は特に厳しい。ただ同じ小売り業界でも感染を予防する・自粛生活を支援する業種はある程度の業績を保っている。移動自粛や在宅勤務により、スギ薬局でも郊外型の店舗で、特に20~30代の女性の来店が顕著に増えた。

加藤氏:外食産業が止まったことにより、農業・漁業従事者は影響を受けた。6月以降は需要が増加したが、雨続きで農作物が不作となり供給できない悲惨な状態が続いた。但し、この状況は女性などが新しい意見を言える雰囲気をつくり、意識変革が起こるきっかけになったという良い面もあった。

島田氏:リモートワークが普及してデジタル化が加速している状況について

佐宗氏:大学では前期の講義を全てリモートで実施したが、一方的に聞くだけの講義が双方向コミュニケーションに変わり、コンテンツを事前に作成しておけば休講がなくなるというメリットもあった。

平田氏:異常を感じたら病院に行くことが普通だったが、予防や早期医療の仕組みができればもっと健康を維持できるし、医療費も抑えられる。病院に来る前にたくさんの情報を解析できれば医療は変わる。多くのスタートアップがここをチャンスとして取り組んでいるため、それを引き上げていく仕組みを形成していくことが必要である。

岩木氏:オフラインのイベントやコンサートが一斉に中止になったが、ゲームの中で新曲発表が行われるなど、デジタル市場の価値観が変化している。但し、日本の課題はデジタルエンジニアが少ないこと。職人に匠の称号を与える文化だが、ソフト開発をしている人、すなわち「手に取れないものづくりに対して匠の称号を与えることができるのか」 意識改善と教育が必要である。手先が器用でおもてなしの精神がある日本人はデジタル人材に向いている。また、場所がいらないソフトウェア産業は日本に向いている。

島田氏:スタートアップを取り巻く環境について

佐宗氏:Amazonがシアトルのダウンタウンに進出し、治安の悪い地域が見違えるように変化した。スタートアップを含めた一つの企業がまちづくりにまで影響を及ぼすことを実感した。また、シリコンバレーはアメリカ国内ではなく、現状、じっくりと海外のスタートアップを見ている。日本の企業は興味が国内に向きやすいので、海外のスタートアップにも目を向けて長期ビジョンをしっかり立てて行動してほしい。

平田氏:日本のチャンスは高齢化社会の到来が世界より早いこと。社会にデジタルを埋め込んで、いかに肉体の衰えをカバーしていくか、ストレスを軽減させるかがポイント。東京はストレスばかりだが、名古屋は都市機能があるのに少し郊外に出ると自然もある良い環境。当地はチャンスが沢山眠っている。

杉浦氏:常識が通用しない時代になったからこそ、アクションを起こすには絶好の機会。「多少の不具合は後で修正するというスピード感で進められるか」「スタートアップに熱意があるか」これが重なれば未来のスタンダードになるものが生まれるはず。

加藤氏:価値観が変わり、会社の軸が持続可能なものならば世界に認められやすく、優秀な若い人材も集まりやすい。経済におけるマイノリティ(女性、若者、外国人)の発想は新しい価値観をつくるため、受け入れる準備をしてほしい。また、野菜バスは目の前にある課題を解決するために静岡ではじめたが、人類共通の課題に取り組めば、世界に出ることは簡単だと実感している。

島田氏:環境を重視する流れも重要なトレンドだが

加藤氏:農業はきれいなイメージだが、環境破壊が大きい産業の一つである。日本は個々の農家のものづくりが素晴らしかったので、個人に任せた結果、全員で取り組まなければならない環境問題などの課題については仕組化が出来ておらず、世界一農薬を使う環境後進国となってしまった。また、物流はハブアンドスポーク方式が最適であるという世界の流れから、当地で生産した野菜が一旦東京に行き、再度手元に届く状況になっている。野菜バスはITを駆使してそれを変化させる事業である。

島田氏:どのように地域を活性化させるか

岩木氏:瀬戸市で小学生向けにICT教育講座を10年実施しており、今では卒業生が運営側で音声合成技術や人工知能の教育講座をはじめている。地域活性化にはそのベースとなる教育がキーとなる。また人を必ずしも呼び込む必要はない時代に来ていて、デジタルの技術を使ってクライアントが名古屋の施設をリモートで使っている。

加藤氏:確証がなければ決断できないという「エビデンス」という言葉をこの地域からなくしてはどうか。新しいことをはじめるのにこの言葉を使って蓋をするのではなく、チャレンジする寛容性を持てば、この地域はもっと元気になると考えている。

平田氏:人間は考えているときでも使っている脳はたった5%、残りの95%は意思に登らない世界。ここをいかに操るかがデジタルトランスフォーメーションのキーとなる。脳を知って人間を知る。世代に関わらずフレンドリーに使える技術にするためにはブレインフレンドリーが重要であり、ここから地域産業をつくっていくことが必要なことだと考えている。

杉浦氏:健康というキーワードを軸に、お客様・患者様との接点を持ち、支援していくというビジョンを持っている。そのため、買い物や医療機関への移動支援サービス、買い物困難者に対してのデリバリーサービスなど、利用者、企業、行政も一緒に応分の負担をして事業が成り立つような取り組みを開始している。

佐宗氏:都市が大きくなると、どこも特色が失せ面白くなくなってしまう。但し、スタートアップが継続的に生まれるエコシステムができると、混沌として突拍子もないことをたくさんやっている人が増えるため、地域活性化のきっかけになる。名古屋に来るとこれが体験できるというものをつくるべき。それが求められる社会になってきた。

島田氏総括
本来変えていかなければならなかった社会課題が、コロナ禍により「圧縮された変化」として現れた。 本日のシンポジウムでは、このピンチはチャンスに変えることのできる絶好の機会であるとの認識で一致した。中部圏の変革に向け、スタートアップ活動が一層力強く動いていくことを信じている。


≪写真:左から島田氏、平田氏、佐宗氏、杉浦氏、加藤氏、岩木氏≫

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