2025.6.18
プレスリリース / 会長コメント
<はじめに>
本日、第16代中経連会長に就任しました勝野でございます。私は5年間、副会長を務めてまいりましたが、この度は会長という大任を仰せつかり、改めて身の引き締まる思いであります。
微力ではありますが、中部圏の持続的な発展に向けて、中経連の活動に全力を傾注する覚悟でありますので、引き続きよろしくお願いいたします。
<現状認識>
さて、わが国は現在、加速する人口減少や東京一極集中に伴う地方の人手不足に直面するほか、米国による関税政策、とりわけ、自動車産業への関税が当地経済の先行きに不透明感をもたらしています。
加えて、様々な領域における米中対立、ウクライナや中東の不安定な情勢などの行方によっては、世界経済全体の減速を招くリスクが想定されます。
<活動の3本柱>
このような中においても、時代の潮流を確実に捉え、進むベき方向を見定めた上で、中部圏の明るい未来の実現に向けて力強く前進していくことが重要です。
中経連は本年2月に、2050年頃におけるわが国の「豊かで持続可能な社会」の実現に向けた「羅針盤」として、「中部圏ビジョン2050」を公表し、当地として目指すべき社会像を提示いたしました。
そして本日、その社会像から想定し、中経連として、2030年までの実現を見据える中期活動指針「ACTION2030」を策定いたしました。
指針では、ビジョンで掲げた3つの目指すべき社会像、すなわち、「産業の進化と多様化」、「人材・働き方の高度化」、「魅力と活力ある地域社会の形成」への貢献に向けた、中経連としての具体的な活動を取りまとめました。
とりわけ、新体制が3本柱として位置付ける活動は、「広域連携の強化」、「オープンイノベーションの促進」、そして「人材の育成・活躍」の3つであります。
(広域連携の強化)
まず、第1の柱に掲げる「広域連携の強化」は、中経連が担う一丁目一番地の役割であり、特に力を注いでまいります。
具体的には、広域の産学官金による連携のもと、社会・経済活動の土台となる防災・減災に向けた取り組みのほか、東京一極集中の是正に向けた活動、魅力溢れるまちづくりや観光振興に資する施策などを推進していきます。
本年3月には、南海トラフ巨大地震による甚大な被害規模が公表された中、企業の災害に対する対応力向上をはじめ、中部圏域内外の自治体間における連携強化などは、先送りできない「待ったなし」の課題です。
一方、少子化や若者の首都圏への流出に伴う地方の人手不足に歯止めがかからない中、東京一極集中を是正し、多極分散型の社会を構築することは、中部圏はもとより、わが国の持続的発展に向けて不可欠です。
例えば、政府の「地方創生2.0」でも掲げられている中央官庁の地方移管や経済圏の実情に対応できる広域行政のあり方に関する調査・研究への着手など、東京一極集中是正に向けた活動を強化していきます。
同時に、国内外から中部圏に人を呼び込み、地域活性化につなげるためには、リニア中央新幹線の開業を見据えたインフラ整備やまちづくりのほか、当地が有する魅力を国内外に向け、絶え間なく情報発信していくことが重要です。
中部圏は、美しい日本アルプスの山々をはじめ、木曽三川や天竜川、大井川といった河川、伊勢湾、三河湾、駿河湾などの自然環境に恵まれています。
「人間と自然の共生」や「利他の精神」など、自然とともに育んできた日本の多様な価値観と、その多彩な魅力を官民が連携して発信していきたいと思います。
(オープンイノベーションの促進)
2本目の柱は、オープンイノベーションのさらなる促進です。
中部圏は元来、様々なイノベーションが積極的に進められ、製造業のサプライチェーンを発展させてきました。
今後、経済や社会とともに持続的な成長を遂げていくためには、オープンイノベーションを通じた「新しい価値の創出」による、産業の進化と多様化が不可欠と考えています。
こうした新しい価値の創出には、オープンイノベーションに向けた様々な連携が必要であり、これまで培ってきた、ナゴヤイノベーターズガレージや他のイノベーション拠点との連携が、より重要になってきます。
例えば、自動車産業においては、自社内はもとより、調達先の部品メーカーや中堅・中小企業を含むサプライチェーン全体が、データとデジタル技術を通じて各工程でつながり、より質の高いサプライチェーンと化すことで、新たな価値の創出やGXとDXの同時達成が期待されます。
製造業における技術力は、GAFAには無い強みであり、他の企業やサービスプロバイダーなどと連携することで、新たな価値の創出やエコシステム形成に資するオープンイノベーションの源泉になると考えています。
また、オープンイノベーションの促進にあたっては、産学官金が技術の研究段階から社会実装後の姿を共創し、知財戦略や国際規格・標準化までの道筋を描いた上で、連携を深める必要があります。
(人材の育成・活躍)
第3の柱は、当地の持続的な発展の原動力となる「人材」の育成・活躍に向けた取り組みの推進です。
ガレージで学び、育った学生や起業家が挑戦し、活躍できる場づくりを進めるほか、AIやロボットなどの先端技術分野に明るく、多様な人材を束ね、オープンイノベーションを推進できるリーダーを育成していくことが重要です。
当会は、大学のシーズと企業ニーズをマッチングさせる活動を通じ、博士人材や高度外国人材の活躍を支えるとともに、STEAM教育の推進など、新たな価値を創出し、製造業のスマート化に貢献できる人材の育成に向けた活動を展開していきたいと思います。
(半導体産業のさらなる振興に向けた共同検討会の設置)
そして、3本柱を力強く進展させる推進力として、また将来の新たな成長基盤を築く施策として、当地における半導体産業のさらなる振興に資する取り組みを起動してまいります。
世界的なデジタル化の進展やAI技術の需要拡大が続く中、あらゆる社会・経済活動に深く関連する半導体産業は、日本の国際競争力を高める成長エンジンとして期待されています。
「産業のコメ」として、あらゆる分野の製品を支える半導体は、とりわけ、ものづくりのメッカである中部圏において、より利用価値が高まるものと考えております。
足もとでは、北海道や九州を中心に最先端半導体工場の新設が続く中、中経連は今後、当地の全国立大学などで構成する連携組織「シー・フロンツ」とともに、当地における半導体産業の振興に向けた広域的な共同検討会を設置いたします。
まずは、半導体産業に関連する会員企業や関係者からの声に耳を傾け、振興に向けて中部圏として貢献できる役割、領域を探求するほか、当地における半導体人材の育成と活躍に資する仕組みづくりに向けた検討を進めてまいります。
将来的には、このような取り組みが、中部圏における「製造業のスマート化」や「ものづくりのすり合わせ技術」を支えるような動きとなっていくことを期待しております。
<おわりに>
結びに、以上、申し上げましたように、中部圏の明るい未来の実現に向けて、粉骨砕身、全力で取り組んでまいる所存であります。
魅力、活力に富み、わが国をけん引する中部圏づくりに向け、会員企業や地域の皆さまをパワーの源に、『声と力をつなぎ、成し遂げる中経連』として、挑戦を続けてまいります。